数列:和の中抜けってなに?

7月 20, 2020

今回は、数学のテクニックとして、「和の中抜け」を紹介しようと思います。

まずは例題で和の中抜けの威力を感じてもらって、実際にそのカラクリをみていきましょう!

問題

.次の計算をせよ。$$ \sum_{k=1}^{n} k^2 $$

「なんだよ!こんなの公式じゃないか!」。わかります。でもこの導出が意外とできない方もいるのではないでしょうか?

まずは「解答だけ」をみて、その次に解答に至るまでの過程をみましょう。

解答

関数\(f(x)\)を、\(f(x) = \frac{1}{6}x(x+1)(2x+1)\) とおくと、

$$ \sum_{k=1}^{n} k^2 =\sum_{k=1}^{n} \bigl(f(k)-f(k-1)\bigr) =f(n)-f(0)= \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}$$

解答短くない?

解答が異様に短いですね。でも、解答に書くべきなのはこれだけです。実際に間違っていないことは書いていませんし、$$ \frac{k(k+1)(2k+1)}{6}-\frac{(k-1)k(2k-1)}{6}=k^2 $$ は確かに成立します

さらに、この1個ズレを利用することで、次のように和をとったときに中が全部打ち消しあって消えます

$$ \sum_{k=1}^{n} \bigl(f(k) – f(k-1)\bigr)$$ $$= \color{red}{f(1)}-f(0) \color{blue}{+f(2)} \color{red}{-f(1)}\color{green}{+f(3)}\color{blue}{-f(2)} ・・・+f(n)\color{magenta} {-f(n-1)}$$

このように色のついた項は打ち消しあい、結果残るのは端っこの\(f(n), f(0)\)のみです。これが和の中抜けという名前の由来です。

したがって、残るはこの和の中抜け関数\(f(x)\) (名前は適当につけました^^)を探すだけですね!

f(x)の見つけ方

和の中抜け関数\(f(x)\)は次のステップを踏めば比較的簡単に見つけることができます。

関数を置く

①多項式なら一次元あげた関数
②指数が絡むなら同じ形の関数おまけ参照

恒等式として解く

関数を置いた後、$$ f(k+1)-f(k) =hogehoge $$ $$ f(k)-f(k-1)=hogehoge$$ のような形となるように、この恒等式を解きます。hogehogeはもともと計算するべきシグマの中身(上の例題だと\(k^2\))です。

上の例題では?

それではこれを実践してみましょう。上の例題ですと多項式\(k^2\)がシグマの中身ですので、これを一次元あげた3次式で恒等式を解いていきましょう。

求める和の中抜け関数を\(f(x)=ax^3+bx^2+cx+d\)(a,b,c,d:定数)とおくと、$$ f(k)-f(k-1)=k^2$$ $$ \Leftrightarrow \bigl(ak^3+bk^2+ck+d\bigr) – \bigl(a(k-1)^3+b(k-1)^2+c(k-1)+d\bigr) =k^2$$ $$\Leftrightarrow 3ax^2+(-3a+2b)k+(a-b+c)=k^2 $$ 上の式が常に成り立つための定数\(a,b,c,d\)の条件は、$$ 3a=1$$ $$-3a+2b=0$$ $$ a-b+c = 0$$ $$d:任意$$ $$ \Leftrightarrow (a,b,c)=(\frac{1}{3},\frac{1}{2},\frac{1}{6})$$

したがって、求める関数(の一例)は\(d=0\)とした $$ f(x) =\frac{1}{3} x^3+\frac{1}{2}x^2+\frac{1}{6}x $$ $$ =\color{red}{\frac{1}{6} x(x+1)(2x+1)}$$

これは公式からもお馴染みの形ですね!これで和の中抜け関数を求める計算が完了しました。

注意

ここで注意していただきたいのは、以上の和の中抜け関数を求めるのは、すべて計算用紙の上でやることです!実際の試験の答案では登場させても意味がないので注意してください。答案では、上の解答のように「どこからかこんな関数が降ってきました!」みたいな姿勢で使う感じです^^

練習問題

せっかくなので、和の中抜けを用いて解く練習問題を用意しました。
和の中抜け関数までの過程だけ載せ、計算は省かさせていただきます。

練習問題1. 次の計算をせよ。$$ \sum_{k=1}^{n} k(k+1)$$

過程. \(k,k+1\)が隣あっていていい感じなので、ちょっと工夫してみましょう。
$$ k(k+1) = \color{red}{\frac{1}{3} \bigl(k(k+1)(k+2)-(k-1)k(k+1)\bigr) }$$

練習問題2. 次の計算をせよ。 $$ \sum_{k=1}^{n} (k×2^k)$$

過程. $$ \bigl(a(k+1)+b\bigr) ×2^{k+1} -(ak+b) × 2^k = k×2^k $$が恒等式となるような定数\(a,b\)は、\((a,b)=(1,-2)\)

おまけ

以上が和の中抜け関数の作り方でした!途中の計算さえ間違えなければ、入試に出てくる単純なシグマ計算は大抵できてしまうということを実感していただけたかと思います。

では、以下は余談ですが、先ほどあげた和の中抜け導出手順が、

①多項式なら一次元あげた関数
②指数が絡むなら同じ形の関数おまけ参照

となっているのはなぜなのでしょうか?

これは、シグマ計算と積分計算が非常に良く似ているからなのです。数3で区分求積法を勉強されている方ならご存知かもしれませんが、極限をとるとシグマ計算が積分計算の結果と一致するという面白いことが起きます。

習っていない方でも、シグマ計算も積分計算も、両方「足し算を行っている」ことを思い出してください。そうすると、

・多項式→積分→次元が上がる
・指数関数→積分→次元はそのまま

こともなんとな〜くは納得いくのではないでしょうか!